2009年9月10日木曜日

ブローディガンと大菩薩嶺

「ブローティガンのことばは幻想的だ。幻想は、人工的に現実を完結させない、と思う。むしろそれは、現実を逆探知する回路なのだ。」

-「アメリカの鱒釣り」の藤本和子による訳者あとがきから引用-


山に向かう時、必ずといっていいほど持っていく本、リチャード・ブローディガン「アメリカの鱒釣り」。

この本に魅せられてしばらく経ちますが、こんなに登山と相性のいい本もないんじゃないかな、と思います。

山という場所は僕にとって非日常な場所なんですが、都市と山を行き来する僕の登山には、まさにふさわしい本です。

現実と幻想、日常と非日常、都会と山、様々な狭間にとらわれている僕にとってこの本はパスポートとなりえているような気がしています。

というわけで、前日の外苑前OFFICEでのDJを早めに切り上げさせていただき、先週土曜日はめずらしく早起きして、行ってきました、山梨に。

目指す頂は、霊峰として有名な大菩薩嶺、2057mです。

快速ビューやまなしに乗って、午前11時過ぎに塩山駅に到着。塩山駅からはバスで大菩薩登山道入口へ。午前12時頃、登山開始。
まずはテントを張る予定地、山小屋ふくちゃん荘(標高1700m)へ向かう。登山道入口が標高900mあるので、標高差約800mを2時間ちょっとで一気に登らなければいけません。

炎天下の中、テント担いで、しかも日頃の不摂生がたたっていたのか、相当キツかったです…。

しかも、登山道とは別に迂回する形ですが、一般車道もふくちゃん荘まではあるので(バスは登山道入口までしか行きません…)、車さえあればラクをできるかと思うとなおさらキツイ…。

体中の水分を入れ替えるかのように汗をかき、ポカリを飲む。ひぃー、でも健康的だ。

14時半、ふくちゃん荘へ到着。ここで遅い昼食。山菜そばをいただく。基本山では自炊なので、たまにこうやって山小屋で注文する食事は本当に美味しいと思う。
注文すれば、食事が出てくるという、すごくシンプルなことに感謝!

で、食事を終えたら、せっせとテントの準備を。

僕は、アライテントのタフライズというテントを6年ぐらい愛用していますが、毎度その設営のしやすさ、丈夫さに驚かされています。エアライズよりは少し重いけど、その分生地が厚く、タフなところがいい。

テント場の平らなところを見つけ、アライテントのグランドシートを敷き、その上にタフライズを設営。設営が完了したら、これまた愛用のMPI OUTDOORS ALL WEATHER BLANKETをテント内に敷きます。テント内に直接サーマレストとかを敷くよりも、これを敷くだけで地表からの冷気が遮断され、かなり快適になります。すごくオススメ!さすが、NASAの素材!
で、サーマレストプロライト3を膨らまして、モンベルのU.Lスーパーストレッチダウンハガー#4(寝袋です)を広げて、GENTOSのLEDランタンEX-737NXを2本吊るして、終了。

本来なら登頂は翌朝にして、ここで山小屋でビールを買ってチルアウトしたいところだったんですが、なんと翌日結婚式が都内で13時からあったので、余裕こいている場合ではありません…。

ということで、15時半、登山再開。まずは大菩薩峠を目指します。

水筒、雨具やヘッドランプ等の必要なもの以外はテント内に置いて、アタックザック(登頂用のコンパクトなリュック)に切り替えたんで、驚くほど体が軽く、スイスイと歩けます。

ちなみにこのアタックザック、パタゴニアのライトウェイトトラベルパックを僕は使っているんですけど、かなりレベル高いです。前蓋のポケットに本体を収納できるので、バック自体がかさばらないで持ち運びできるし最高。アタックザックって安っぽいものが多いんですけど、これは容量もそこそこ入るし、作りがしっかりとしていて、日帰り登山でも使えます。何より軽い!

実は、元々パタゴニアが好きで山登り始めたくらいなんで、パタゴニアかなり好きなんですけど、そういえば、ここ3年くらいはいいウェア出してませんよね。キャプリーンシリーズのベースレイヤーと、Rシリーズのミドルレイヤーはやっぱりパタゴニアだよなーと思いますが、ハードシェルはいまやアークテリックスにお株を奪われてしまいました。昔はいいハードシェル出していたんだけど、最近のはちょっと街着みたいなので買う気がしませんね。今着ているハードシェルが随分前のパタゴニアなんで、これの寿命がきたら(まだまだシールドも劣化してませんが)、アークテリックスかモンベルかで超悩みます。

閑話休題でした…。

40分ほどで、大菩薩峠へ到着。1897m、もちろんまだ頂上ではありません。それにしてもガスってて何も見えない…。

そこからしばらく稜線を歩きます。霧の中の稜線歩きは、どこかこの世のものとは思えない、空中散歩といった感じです。そのうち賽の河原なんてところもあって、手積みの石の塔がそこら中にあるところなんかはさすが霊峰といったところ。ここにある避難小屋に一泊ってのだけは経験したくないです…。

標高2000m前後くらいから、雲の切れ目からお日様がちらちらと見え始め、天気が回復してくると、周囲の山並や眼下の湖が見え、展望を少しだけ楽しめるようになりました。

一匹で佇む立派なシカともご挨拶。近年ありとあらゆる山で増え過ぎたため害獣と呼ばれておりますが、山で会えると嬉しいものです。もっと食べれる機会が増えるといいんですけどね。野生のシカは、下処理が大変なんで、一般向きではなさそうですけど。じっと見つめていると、僕の妄想に感づいたのか、軽やかに山を駆け下りていきました。

展望が360度開けている雷岩を経て、木漏れ日がキラキラと輝く林道をずっと歩いていくと、着きましたよ、大菩薩嶺、2057m。ふうー。

ここは木に囲まれていて、展望がよくない頂上としても有名です…。先に到着していた中高年の団体さんが一休みしています。挨拶をして、少しおしゃべりなどを。そして、写真を毎度のことですが、頼まれます。僕がいなければ全員写真を撮れなかったということで、ほとんどこの団体のために写真を撮りに頂上へ来たようなものでしたね。暗くなる前にテント場まで戻りたかったんで、余韻に浸ることもなく、すぐに帰路へ。

17時くらいに頂上を出発して、帰りは大菩薩峠を経てではなく、近道で多少勾配がきつい、唐松尾根を駆け下りました。18時前にはふくちゃん荘に到着。

時間が無い中での山行でかなりキツかったですが、バッチリ楽しみました。

で、ビールを小屋で買って、持ってきたサキイカをつまみながら、チルアウト。いやー、最高!このために山に登っているようなもんです。

そんな感じで一休みしたところで、テントに戻って食事を用意しながら、またまたビールを飲みます。アルファ米で炊いたご飯、バーナーで直接缶をあたためたサンマの蒲焼、インスタントの豚汁、各種のおつまみなど、簡素な夕食をたいらげます。山ではちゃんと食事ができること、それだけで贅沢なんだなーと実感できます。そして、ビールを飲み終えたところで、赤ワインを投入。

個人的には赤ワインは山で飲むが一番美味しいと思っています。ウィスキー、バーボン、焼酎、日本酒など、人それぞれだと思いますが、僕は山では赤ワインを持参するようにしています。冬に飲むヴァン・ショー(ホットワインのこと)なんか最高ですよ!

片付けをして、テントに戻って、何をするわけでもなく、ひたすらつまみながら、赤ワイン。切れたら寝ます。21時にはもう寝ます。

山に来ると生活がシンプルになります。登る、食う、飲む、寝る、そんな感じです。

そして、遠く伊豆のメタモルフォーゼに想いを馳せます。

僕が夢の中にいるときに行われている絶叫、さかしまの野外。バンバータ、プレフューズ、ムーディマン、ラリー・ハードなどなど…。


朝4時15分起床。まだ夜は明けていません。

ダウンを着て、朝食を用意。アルファ米のお茶漬けと、インスタントの味噌汁が体を温めてくれます。
食事を終えて、紅茶をいれ、一息ついてから、テントを片付け始めます。

午前6時過ぎ、全ての片付けを終えて、下山開始。朝日を浴びながら、行きと同じ道を下っていきますが、昨日とは180度違う清々しさです。やっぱり山では朝から動きたいですね。

大菩薩登山口、裂石に到着したのは午前7時半でした。気合いの山行でしたが、いい登山となりました!今度はもう少しゆっくりしたいと思いましたが…。

ちなみに結婚式は10分ほど遅刻しましたよ…。トホホ…。

三歩みたいな感じで、登山ウェアで出席なんて、もちろんしてませんけどね。

0 件のコメント: