『ジョニー・B・グッジョブ 音楽を仕事にする人々』 浜田 淳 著
◆音楽稼業20種25人のインタビュー集
音楽教師、PA、舞台監督、イベンター、リペアマン、レーベル、ディストリビューター、音楽ライター、ミュージシャン、DJなどなど、あらゆる「音楽の仕事」に従事する人たちに対して、その仕事や生活について根掘り葉掘り聞き込んだノンフィクションです。一日の大部分を占める、つまり人生そのものといっても過言ではない「仕事」というトピックを通して市井の人々の人生観を垣間見る、という意味では、本書は単純に業務内容を紹介した本では終わりません。本書を読むことは、清も濁も幸も不幸もすべて飲み込んだ、つまり社会そのものを覗き見る体験となることをお約束します。
とはいえ、音楽業界への就職や転職のためのハウツーとしても、ちまたにあふれる「実用書」「ガイドブック」よりも、図らずも役に立つ内容になっています。
本書は恐縮ながら、スタッズ・ターケル『仕事!』、リャオ・イウ『中国低層訪談録』やフレデリック・ワイズマンの諸作などに代表される、いわゆる「ただの人」の言葉こそ読むに値するとした考えのうえに成り立っている本です。メディアがいまわの際にどれだけストリップショーに励もうとも、なんの制約も持たない彼ら「市井の人々」の「素」の声の魅力にはとうてい追いつけないのではないでしょうか。
http://natalie.mu/music/news/33442
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音楽を仕事にする
そんなこと、生まれてから一度も考えたことがありませんが、気がついたら仕事ではないにしても、音楽にはずいぶんとコミットしています。特にここ5年くらいはDJとして毎週末どこからしらでレコードを触っている気がします。たとえそれがどんな現場であっても。もちろん、音楽を仕事にしているという意味でのプロとしてではないとしても。
そして、縁が縁を生んで、こういう本の制作に少しだけでも力になれたことは、いち音楽ファンとして嬉しい限りです。もちろん、音楽を仕事にしているわけではないので、もちろん登場人物としてではありませんが…。(DJとしてはクボタタケシさんがインタビューに答えています。)
仕事についての本というと、僕なんかは真っ先に西村佳哲さんの「自分の仕事をつくる」を思い浮かべたりしちゃうんですが、個人的には音楽が好きな分野だとか、少し関わったからということを抜きにしても、この本のほうが面白かった。
「自分の仕事をつくる」は僕なんかから見ると非常に意識の高い人達ばかりが自分の仕事について語っていて、共感ももちろんあるんですが、憧れを煽る側面というか、そういうのが少なからずあるように感じられたんですね。
(断っておくと、何度も読んでいる好きな本ですよ~。)
要は好きなことを仕事にするってすごく難しいわけです。突き詰めると、仕事に対して恐ろしいほどのフラストレーションを感じていたら、やっぱり人生は楽しくない。
僕は割と仕事には満足しているほうじゃないかなと思っています。それも、DJやる環境があって、違うチャンネルも持っているから、というのも大きいですけど…。
僕でさえも仕事には前向きな方がいいと思ったりするわけですね。
さらに言えば、好きでたまらなくて突き抜けられていれば、理想です。
でもそれってなかなかできないことだったりします。少なくとも万人がそういう環境にあることは実質無理だと思います。
西村さんの本から感じるのは、仕事に対して貴賎はない、どんな仕事でも誇りを感じられるような社会が素晴らしいってことなんですけど、なにせ取り上げられている人達がみんな素晴らしい人だから、違和感があったりするです。自分にとってそのサンプルが遠く感じるということが要因だと思うんですが…。
世の中には圧倒的な違和感を抱えながら(だって、就職活動している学生が、第一希望の企業に勤められて、希望の部署に行く確率なんてめちゃくちゃ低いわけです)、仕事をしつつも、家族を懸命に養っている人達のほうが多いと思うわけです。自分のやりたいことは他にあるかも…なんて思いながら。
そういう人達に対して、その仕事はあなたに合っている、その仕事に誇りを持ってください、あなたの仕事は社会と関わっているし、前向きであればあるだけ社会は良くなる、というのは全くもって正論なんですが、それは、どこか、人の役割(仕事)はある程度決定している、だから諦めて、自分の今ある現状に対して切磋琢磨せよ!と、そういうふうにも聞こえるわけですね。仮にアイドルになりたい人がいても、なれる人はとてつもなく少数だから、夢なんて見ずに今を生きろ!という具合に。極論かもしれませんが…。
なので、西村さんのこの本はある意味において非常に現実的な本だと思うわけです。もちろん、クリエイティブな人がたくさん出てくるので、そういうのが好きな人はだいぶ煽られますし、モチベーションがあがる人もいるかと思います。みんな、夢を語りますし。
ただ、それは成功した人達に話を聞いているからであって、彼らは人と視点が違うだろうし、努力もしているし、才能もあるだろうし、運もある、だから、結果としてそういう場所に居ることができるわけですね。そういう人は世の中に少数しかいないと思います。
「(経済)奴隷が奴隷頭になるための本」とビジネス書とかを批判する人達もいて、高尚な仕事論を語る人達もいるかもしれないですが
およそビジネスライクなものから哲学混じりのものまで、仕事に関する本の多くが言っているのは
視点を変えろ!
自分を磨け!
人との出会いを大切にしろ!
チャンスを掴め!
境遇に感謝しろ!
等々…
の突き抜けろ!という意見がほとんどです。そんな人達ばかりじゃないですよね、世の中。
(もちろん、少なくとも好きなこと、やりたいことに対して、上記のようになれないとするなら、それは仕事であろうがなかろうが、ブレイクスルーはなかなかできないと思いますけど。)
むしろ、耐えることや「ああしとけばよかった…」なんて悩むことのほうがよっぽど多いわけで…。誇りを持ってようがなかろうが、好きであろうが嫌いであろうが、仕事のことなんてなんとも思ってさえいなくても、仕事をしているというだけで社会にコミットしているんで、本来なら、それだけでいいはずなんですよね。っていうか生きていればいい、はずなんです。
そういう意味で、リアルだとはあんまり思えないわけです。
もし仮に仕事ってなんだろう?って考えるなら、成功者以外にも、抑圧されている(もしくはそう感じている)人達、成功と縁がない人達、仕事に就けない(就かない)人達にも焦点をあてることこそがリアルだと思うわけです。
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すごーーーーくこの本に対しての前書きが長くなりましたが
要は音楽ということを抜きにして
そういう“市井の人々”に焦点をあてた仕事本が、この「ジョニー・B・グッジョブ」ということでしょうか。
この本「ジョニー・B・グッジョブ」では音楽の中心から周縁にある様々な仕事に関わる人達へのインタビューが敢行されています。まるで、ルーレットで選んだかのようなランダムさに戸惑う人もいるかもしれない。僕自身もステレオタイプな音楽仕事へのイメージはだいぶ変わりました。
著者の浜田さんはあの“RAW LIFE”の主宰者です。ここでは詳しく書きませんが、RAW LIFEについても浜田さんは自身の仕事として書いています。一回につき、総経費が1,000万円という話は、僕の想像しているRAW LIFEとはだいぶ違うし、およそメディアが喧伝しているものとのイメージとはかけ離れているでしょう。僕もイベンター、オーガナイザーの端くれですが、とてもやり切れる気がしません…。というか、やりたくなるような成功体験的な書き方をしていません。実はこうでした、大変でしたという感じがとてもリアルなわけです。
フリーの編集者である著者が、七転び八起きでこのフェスをやりきったことは、たぶん、この本の前書きにもある
「自分の好きなことを仕事にできないだろうか」
というシンプルな願いに端を発したことからだとは思いますが(もちろん、楽しいことをやっちゃえ!的な初期衝動もあるでしょう)
経済的に裕福になったわけではありません。
世の中には音楽を突き詰めて貧乏になる人もいれば、音楽に興味がなくてもそのマーケットを狙って荒稼ぎする人もいますし、文化を伝えるという大義を持って臨んでいる人もいれば、この業界には未来はないって言ってさらりとやめちゃう人もいる、もちろん何も考えてなくて、気付いたら何十年もやっていた人もいる、音楽が好きで好きで、突き抜けて成功する人もいる。
この本に登場する人達はそういう“音楽”に関わっている(しまった)人達。
そして、この本でとりあげていることも、たまたま“音楽”であるだけ。
そういう社会の縮図のような日常的な風景を曝け出した時に個人がフィットするものを感じ取ればいい、そういう自由さを僕はこの本から受け取りました。また、当たり前のことですが、仕事って本当にたくさんあるのね、ってあらためて思ったわけです。
それにしても…
「安定したところに勤めて、お給料でたくさんCDを買ったり、趣味としてレコーディングしていたほうが、よっぽど音楽の近くにいられると思うんですよね」(本文より)
という意見には、なんだか深く考えさせられるものが…。
仕事について、音楽について、考えるきっかけをたっぷりもらいました。
人の生き様ってやっぱり面白いですよね!!!
そうそう!!!
この本の発売日6月26日土曜日はcommunication!だったりします!!!
サンプルを2階と4階に一冊ずつ置く予定ですので、是非読んでみてくださいね~。目次なんかを見て、気になる人、職種をチェックしてもらって、さらっと読んでもらえれば嬉しいです。
購入はこちらから!
ちなみに。
このブログで、ここで書いている“仕事”というのとは別の意味での“仕事”として、こんなことも書いていましたね。
「パーティーとDJについての2,3の考察」
内沼晋太郎君の「本の未来をつくる仕事/仕事の未来をつくる本」も仕事について考えるきっかけをくれる一冊だと思いますので、こちらも是非。
※twitter始めました。あまりよくわかっていませんが、フォローなど宜しく御願い致 します。
http://twitter.com/haraguchic
2 件のコメント:
このたびは大変お世話になっちゃいましたね。
ホントありがとうございます。
いろいろとハラグチック用語で丁寧にご紹介いただいてありがとうございます。
まあ、いろんな人がいるからこの世はオモロイと思っていたいと思います。
今後ともよろしくお願いしますよ!!!
VABOIさん!
こちらこそ!こんな素敵な本に関わることができて最高の経験をさせていただきました!
ありがとうございます!!!
それにしても反響すごいですね!
僕も少しでもこの本の良さを伝えていければと思います。
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